男子第49回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

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西脇工 最多タイ7度目の優勝

2連覇のテープを切る西脇工の森口
2連覇のテープを切る西脇工の森口

2時間3分32秒の歴代3位の好記録をマークした西脇工が、2年連続で、小林と並ぶ史上最多の7回目の優勝を飾った。1区こそ、ワイナイナ(仙台育英)の2年連続区間賞の走りに譲ったものの、西脇工は序盤で2位につけると、3区・清水将の区間賞の力走でトップに。4区の藤井も区間賞をマークして、西脇工と報徳学園とで兵庫県勢5連覇を達成した。

大牟田が3年連続の2位に入り、洛南が激しい3位争いを制して6年ぶりの入賞。4位には、2区で史上初の7分台を記録した佐藤の活躍で初陣の佐久長聖が入った。埼玉栄は4年連続の入賞を果たした。

■ レース評

中盤に加速しライバルを圧倒

3区2キロ付近で仙台育英・野村を引き離してトップを走る西脇工・清水将(右)
3区2キロ付近で仙台育英・野村を引き離してトップを走る西脇工・清水将(右)

西脇工が全区間をブレーキなくつないで、ライバルを寄せつけなかった。勝負どころの3、4区での強さは出色で、西脇工の黄金期を予感させた。

1区は仙台育英・ワイナイナが飛び出し、西脇工・中尾と大牟田・野村は4キロすぎで脱落したが、中尾は8キロ付近まで粘って9秒差の2位でタスキ渡し。2区で3秒差の射程内に詰め、3区で清水将がスタートして間もなくトップを奪った。清水将はムダのない精密な走りで独走態勢を築き、2位に浮上した大牟田との差を52秒までに広げて区間賞の快走。続く4区で藤井が1分17秒差をつけるキレのある走りをみせ、安全圏に逃げ込んだ。

予選記録トップの大牟田は主力・池田を欠く苦しい布陣。3、4区でズルズルと後退したのが響き、一度も西脇工をとらえられないまま中盤で命脈を絶たれた。6年ぶり復活の洛南は終盤の追い上げで執念の3位。佐久長聖は超高校級ランナー、2区・佐藤の区間新が光った。埼玉栄は終盤のブレーキを最終走者・山内の猛スパートで取り戻し5位。仙台育英は10位に終わった。

ワイナイナに9秒差。光る1区の粘り

濃紺のユニホームが先頭に立ったのは、3区にタスキが渡って間もなくのこと。同区間わずか700メートル付近だった。西脇工・渡辺監督が描く「4区終盤でトップに立てたら」との予測を上回るハイペース。その流れを作ったのは1区の中尾だ。

各エースが集まる花の1区。まず、昨年の同区区間賞で今年の高校総体5,000メートルを制したワイナイナ(仙台育英)が飛び出したが、これは予想の範囲内。ポイントは後続がどの位置で追うかだが、追走した中尾とライバル大牟田・野村の2強の明暗がここで分かれた。

駅伝の場合、自分より速い選手の後につくのは勇気がいる。無理してスピードアップするため、後半にペースを乱し、その区間だけでなくレース全体を危うくしてしまう。

「ワイナイナの調子はいい。一人で駅伝をしたらダメ」。レース前に渡辺監督からこんな指示を受けていた中尾だが、自分の判断で背後についた。「そんなに(ワイナイナが)速くなかったので、自分のペースならいける」

もちろん野村も追うが、表情が険しくなるばかり。4キロ過ぎで2人から遅れ始めた。後半追い上げ型の野村は自分のペース以上に突っ込んでしまったからだ。5,000メートルの自己ベストでは、ほぼ互角の中尾と野村だが、その差は二度と狭まることはなかった。

中尾はその後も粘り、2区中継点での仙台育英との差はわずか9秒。一方、西脇工と大牟田とは33秒差に広がり、この時点で優勝への布石が打たれた。2区・藤原が仙台育英との差を着実に詰めると、3区・清水将が逆転。西脇工は以降もペースを乱すことなく、自分たちの走りを貫き、大牟田との差は実力差以上に広がっていった。

西脇工の強さはいったいどこにあるのか。「厳しくすると今の子供たちはついてこない。練習環境を整えて風通しをよくするだけ」。指導歴30年の渡辺監督の言葉の裏にあるのは自主性の尊重だ。いったん号砲が鳴ると監督は何もできない。選手個々の自主性がレースをつくっていく。自分でペースを考えて走った中尾の走りがまさにそうだった。今回の西脇工の優勝はチームカラーがもっとも表れた勝ち方だった。

【中田 博維】

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