男子第48回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

現在の校名・旧校名一覧

西脇工 高校最高でV

「1位だ」と指で示し、高校日本最高記録でゴールする西脇工の中安
「1位だ」と指で示し、高校日本最高記録でゴールする西脇工の中安

2時間3分18秒の高校日本最高記録、大会新記録をマークした西脇工が、2年ぶり6回目の優勝を飾った。仙台育英が序盤をリードしたが、徐々に順位を上げた西脇工が3区・中尾でトップに。中盤以降は独走態勢を築き、第45回大会(1994年)に西脇工自身が樹立した高校最高記録を3秒短縮した。6回目の優勝は7回の小林に次ぎ、報徳学園と並び歴代2位タイ。兵庫県勢は4連覇。

エースの欠場が響いた大牟田は2位。2回目の出場の土岐商は10位から3位に躍進。古豪・世羅は11年ぶりの入賞を果たした。8位入賞校すべてが2時間7分を切ったのは初めて。

■ レース評

西脇工 5人が区間賞リレー

西脇工の群を抜く強さが光った。ライバル大牟田を突き放した後は、高校最高記録との勝負となった。

1区はケニア出身のワイナイナを擁した仙台育英が飛び出した。土岐商、埼玉栄などが続き、大牟田、西脇工は第3集団の8位、9位で通過。2区では、2位の埼玉栄など後続チームが追撃態勢に入り、大牟田、西脇工も5、6位に順位を上げた。ここまでは仙台育英を追う展開。

3区は、この日の大勢を決めるヤマ場となった。ペースダウンした仙台育英に代わって埼玉栄、土岐商、倉敷、大牟田、西脇工の5校が競り合いながらトップに迫り、7キロ手前で大牟田、西脇工などが仙台育英をとらえた。さらに西脇工は、中尾が区間賞を奪う快走で大牟田・土谷を引き離し、4区清水が独走態勢を築いた。

西脇工は、その後も各走者が安定したフォームで大牟田の追撃を許さず、区間賞を独占。焦点は高校最高記録の更新へと移ったが、アンカー中安が競技場内に入ってラストスパート。高校最高記録を3秒上回った。

2位には約400メートル差で大牟田が続いたが、左足を痛めたエース・角田の欠場が響いた。3位以降は土岐商、埼玉栄、白石が続き、前半飛ばした仙台育英は10位に終わった。

西脇工 重圧サラリと払い

4区で競り合って、大牟田・野村をかわしトップに出た西脇工・清水=3キロ付近で
4区で競り合って、大牟田・野村をかわしトップに出た西脇工・清水=3キロ付近で

1区奥田のタイムは、渡辺監督の予想より10秒から20秒は悪かった。だが、優勝を争うはずの大牟田・池田からは1秒だけの遅れ。「うちは後半に余裕があるので大丈夫」。奥田がエース区間で記録を欲張らずに役目を果たし、西脇工が得意とする「追跡駅伝」の舞台装置が整った。

2区で大牟田の宮原が序盤から飛ばす。追走したくなるところだが、主将の西田はそのハイペースにも惑わされない。「自分の区間で決めようとするな」という渡辺監督の指示通りに、宮原が後半に失速するのを待って追い上げ、中継所では同タイム。前半で何とかリードを奪っておきたい大牟田にプレッシャーを与え続けた。

3区の中尾も、前回、この区間で区間賞を獲得している大牟田・土谷の背後にはりついて逃げ切りを許さない。むしろ、土谷のスピードを利用して徐々に順位を上げるしたたかさ。2年生とはいえ、「駆け引き、状況判断がしっかりしている」と渡辺監督が信頼を寄せるだけある。中継所手前でトップを奪った。

4区の清水は「中尾がこんなにいい順位で来るとは思わなかった。1位を守ることに怖さを感じた」というが、力みは全く感じられない。対照的に大牟田の野村は力んで上体が左右に揺れ、ロスの大きい走り。中間点過ぎの仕掛けでリードを広げ、勝負を決めた。

優勝候補の重圧をはね返したうえに、高校最高記録まで塗り替えた7人に共通するのは、悲壮感とも使命感とも無縁な、淡々とした走りに徹したことだ。

アンカーの中安は言う。「普段通りに焦らずやれば結果はついてくる。監督のその言葉を信じていました」。簡単そうでいて難しいことをサラリとやってのけた。王者の貫録というおおげさな賛辞は似合わない。けれん味のない、さりげなさがいかに強さ、力になるかを示す、滋味あふれる勝利だった。

【阿相 久志】

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