女子第18回大会の記事

【毎日新聞社紙面より抜粋】

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須磨学園 V

優勝のテープを切る女子・須磨学園のアンカー永田
優勝のテープを切る女子・須磨学園のアンカー永田

1区で23位と大きく出遅れた須磨学園が、2区小林祐梨子(3年)の20人抜きの2年連続区間新記録となる12分35秒の快走で3位に浮上。4区広田(2年)が先頭の仙台育英を捕らえ、最後は5区永田(3年)が逃げ切り、1時間7分34秒で3年ぶり2回目の優勝を果たした。

連覇を狙った興譲館は、ゴール直前で仙台育英をかわして2位。仙台育英は1区絹川(2年)が区間賞を獲得したものの、終盤に競り負けて3位に終わった。

■ レース評

須磨学園 2区小林20人抜き

2区で20人抜き、3.5キロ付近を快走する須磨学園・小林
2区で20人抜き、3.5キロ付近を快走する須磨学園・小林

須磨学園が、2区のエース小林の快走で逆転勝ちした。1区の高吉が区間23位、先頭との差は63秒と出遅れたものの、小林は立ち上がりからスピードの乗った走りで20人をごぼう抜き。2年連続の区間新の走りでチーム順位を3位に上げ、レースを立て直した。須磨学園はここから層の厚さを発揮。3区の村岡、4区の広田がともに区間賞の走りをみせ、4区で仙台育英を捕らえ、アンカー永田が突き放した。

興譲館は1区の高島が区間2位と好位置につけ、アンカー前田が区間賞の力走。仙台育英との最後の競り合いを制し2位に食い込んだ。仙台育英は1区・絹川が区間賞を獲得。2区以降も全員が区間5位以内に入るなど大きな崩れはなく3位に。4位は常磐。5位には終盤に追い上げた諌早が入った。

仕掛け万全 須磨学園1分3秒差「25人で逆転」

4区1.9キロ付近、仙台育英・矢部を抜き先頭に立つ須磨学園・広田(右)
4区1.9キロ付近、仙台育英・矢部を抜き先頭に立つ須磨学園・広田(右)

一人、異次元を走った。須磨学園の主将・小林が1区・高吉からたすきを託されたのは、先頭の仙台育英が通過した1分3秒後。はた目には絶望的とも思える差にも動じない。1,500メートル日本記録保持者の真価だった。

「初めて時計を見ずに走った」と言う。22人もの走者がいる前方だけに大きな瞳を疑らした。大きなストライドで緩い下りを駆ける。「時計を見るのも怖かった」というハイペースで、中間点を待たずに20人抜き。区間新の走りで一気に3位に引き上げた。

とはいえ、トップとはまだ23秒差。小林も「チームを信じるだけ」。それしかできない。4区・広田が中継直後に興譲館を、2キロ手前で仙台育英を相次いで捕らえて先頭を奪い、3秒差でアンカーは永田。仙台育英・沼田にぴたりと後ろにつかれても、前回も5区を走った永田は冷静だった。2.5キロを過ぎてせき払い2度聞いた。相手の荒い息づかいに「上りで仕掛ける」と決心。コースが右へ折れるのを契機に一気にスパートした。

「小林のチーム」と呼ばれたこの3年間。優勝を狙った一昨年は3位。高校最高記録を目標に掲げた昨年は2位。直前にドーハ・アジア大会で長谷川監督と小林がチームを離れた今年は、優勝宣言する間もなかった。チームにはマイナスになりかねないスケジュール。ところが、1,500メートルで銀メダルを獲得して帰国した小林は目を見張った。監督も主将も抜きで、準備万端に仕上げた仲間に迎えられたからだ。

両手の指で「25」を示して永田がゴールテープを切った。「部員24人と長谷川先生と、25人で成し遂げた優勝」。涙でぬらした顔で抱き合う選手が、誇らしげに言い切った。

【藤倉聡子】

◎ トピックス

出力120%地獄のスパート ― 絹川愛(仙台育英・2年)

絹川愛(1区) 仙台育英・2年
絹川愛(1区) 仙台育英・2年

「地獄のように苦しかった」という残り1キロ付近で、残る力を振り絞った。「苦しいところで離されるのが他の選手は一番嫌だから」。狙いすましたスパートで、トップでたすきをつなぎ、「100点満点の走りだ」と渡辺監督をうならせた。

来年の世界陸上5,000メートル出場という夢を実現するため、今秋は基礎体力を高める練習に集中。そのために宮城県予選、東北大会も欠場した。「だからこそ、120%の力を出さなくてはいけなかった。私のために今回応援に回った人もいるのだから」。“地獄”からのスパートは小柄な2年生が見せた、意地でもあった。

青森山田・ワンジュグ、山梨学院大付・ドリカらケニア人留学生に勝って都大路の1区で区間賞を獲得。「ケニア人選手に勝たないと世界は目指せない。この結果は自信になる」。そして、世界を狙う17歳は、満面の笑みでレースをこう総括した。「絹川愛のレースができました」

【平本泰章】

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